Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ひとつのあいじょう

一つの愛情

豊島 与志雄

Leggi 一つの愛情 (ひとつのあいじょう) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 10.635 caratteri · 22 schermate

Aozora Bunko

月を眺め、空吹く風を愛し、お琴や三絃にうさをまぎらそうと致しましても、深い深いうつろ心の救い難さを、どうすることが出来ましょう。人も自然も、ゆがみ縮んだ小さな魂を決して受入れてはくれませぬ。

愛もない、才能もない、生きる何のめあてさえない。

土に這う虫にさえ、生きる自覚はあろうものを、虫より劣った愚かしい無能な人間が、この世に生きる何の意味がありましょう。文学とか芸術とか、そのような立派なものに我身を打込んで精進出来ましたなら、どんなにうれしく、また我道も開けるのではあるまいかと、夢のようなはかない空想にひたるのでございますけれど、何の才能もない愚かさに気づくと、まっくらな恥と絶望に心がめちゃめちゃに打ち拉がれ、打ちなえて、道を歩く気力も、人の顔を見る気力も、何をする気力も、何もかもすっかり失せて、この世に身の置きどころもない苦しい苦しい空虚に、胸がにえ返ります。

何の道にも師弟の間はあるものゆえ、もし先生に泣き泣きおすがりして、我魂の眼を開いて頂き、救って頂けましたならと、ひとり思うのでございますけれど、そのようなことが果して我身に可能なことか、何も知らず知己をも持たぬ身の、ひとりで考え悩む愚かしさに、只うつうつと長い月日がたちました。