Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ひとつのあいじょう

一つの愛情

豊島 与志雄

Leggi 一つの愛情 (ひとつのあいじょう) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 10.635 caratteri · 22 schermate

Aozora Bunko

文学者のところには、未知の人々から、いろいろな手紙が舞い込んでくる。威勢よく投げこまれた飛礫のようなのもあれば、微風に運ばれてくる花の香のようなのもある。それらが、文学者自身の心境の如何によって、さまざまの作用をする。だが、返事を出すも出さぬも、それは彼の自由である。知らない人から突然もらった手紙だから、黙殺しても応答しても、一向に構わないわけだ。大抵の場合は返事を書かないらしいが、時によっては心やさしい返事を書くこともあるらしい。

文学者吉岡信一郎のところへ、或る時、美しい文字の手紙が届いた。彼はもう五十歳近くになっていて、たくさんの小説を書いてきたが、近来、なんとなく気力の衰えを自覚し小説もあまり書けず、人生、というよりも人間が嫌になり、ひいては自分自身にも嫌気がさし、うらぶれた気持ちに沈んで、酒ばかり飲んでいた。突然舞い込んで来た美しい文字の手紙も、いいかげんに読んで、打ち捨てておいたが、あとで、なにか心にかかるものを感じて、ゆっくり読みなおしてみたのである。

お暑さ容易に去りませぬ候、吉岡先生には御機嫌うるわしく御消光遊ばされましょうか。