Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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にんぎょ

人魚

火野 葦平

Leggi 人魚 (にんぎょ) di 火野 葦平 (ひのあしへい) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 7457 caratteri · 15 schermate

Aozora Bunko

そうして、大きな松のかげに身をひそめて、そっと顔をだしました。かるい叫びがおもわず出て、わたしの眼はその白いものに釘づけになりました。

波にただよっているのはひとりの人間の女でしたが、そのうつくしさはなんにたとえればよいでしょう。とてもわたくしにはその女のうつくしさをあなたにつたえる筆をもちません。年のころは十七八かと思われますが、一糸をもまとわぬ裸身で、すきとおるように白い肌はあたかも大理石のようになめらかに光っています。どこひとつ角ばったところのないなだらかな身体の曲線は、縦横にうねりまじわり、ぷっとふくらんだ二つの乳房のさきにある薄桃いろの乳首が、紅玉をちりばめたようにみえます。ゆたかな顔、弓なりの眉、ながい睫毛のしたにある二重まぶたのすずしい眼、端正な鼻、二枚のはなびらのような唇、わたしが画家であったならば、生命をかけてでもかきたいと思うようなうつくしい顔です。ときほぐされたながい漆黒の髪はその白い身体になだれまつわり、その女が波にただようときには、海藻のように水面にうきます。女は夢みるような眼をして、夕焼の空をあおいだり、はるかの水平線をながめたり、鴎のとぶあとを眼で追ったり、防風林の方を見たりします。