Classici giapponesi con furigana
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いせのまき
伊勢之巻
泉 鏡花
Leggi 伊勢之巻 (いせのまき) di 泉 鏡花 (いずみきょうか) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 17.617 caratteri · 35 schermate
「お婆さん、勘定だ。」
「はい、あなた、もし御飯はいかがでござります。」
客は仰向いて、新に婆々の顔を見て莞爾とした。
「いや、実は余り欲しくない。」
「まあ、ソレ御覧じまし、それだのに、いかなこッても、酢蛸を食りたいなぞとおっしゃって、夜遊びをなすって、とんだ若様でござります。どうして婆々が家の一膳飯がお口に合いますものでござります。ほほほほ。」
「時に、三由屋という旅籠はあるね。」
「ええ、古市一番の旧家で、第一等の宿屋でござります。それでも、今夜あたりは大層なお客でござりましょ。あれこれとおっしゃっても、まず古市では三由屋で、その上に講元のことでござりまするから、お客は上中下とも一杯でござります。」
「それは構わん。」といって客は細く組違えていた膝を割って、二ツばかり靴の爪尖を踏んで居直った。
「まあ、何ということでござります、それでは気を揉むではなかったに、先へ誰方ぞお美しいのがいらしって、三由屋でお待受けなのでござりますね。わざと迷児になんぞおなり遊ばして、可うござります、翌日は暗い内から婆々が店頭に張番をして、芸妓さんとでも腕車で通って御覧じゃい、お望の蛸の足を放りつけて上げますに。