Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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いりえのほとり

入江のほとり

正宗 白鳥

Leggi 入江のほとり (いりえのほとり) di 正宗 白鳥 (まさむねはくちょう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 25.430 caratteri · 50 schermate

Aozora Bunko

辰男は立上りざま初めて兄の顔を熟視した。……四年前よりも父の顔にいちじるしく似通っていた。兄が身体を屈めて、英作文を一二行見ている間に、辰男は帽子を被りトンビを着て直立していた。

一人はステッキを持ち草履を穿き、一人は日和下駄を穿いて、藪蔭を通り墓地を抜けて、小松の繁っている後の山へ登った。息休めもしないで一気に登ったので、二人の額からは汗がぼたぼた落ちた。頂上近い処にある小祠まで来て、その側の石に腰を卸した。小祠は田舎の郵便箱のような形をしている。扉は壊れて中には枯松葉が散っているだけで、神体はなかった。そこからは曲りくねった海を越し山を越して、四国の屋島や五劒山が微かに見えるのだが、今日は光が煙って海の向うはぼんやりしていた。

草履を穿いている兄の方はかえって足が疲れ息切れがしていたが、冷々した山上の風に汗を乾かして爽かな気持になると、今までの沈黙を破って、弟に向っていろいろの話をしかけた。あちこちに見える島の名を訊いたり、近くの山の裾の村々のありさまを訊いたりしたが、はっきりした答えは得られなかった。

辰男はまるで他郷を見わたしているようで方角も取れなかった。