Classici giapponesi con furigana
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クルスかんのん
十字架観音
野村 胡堂
Leggi 十字架観音 (クルスかんのん) di 野村 胡堂 (のむらこどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 13.655 caratteri · 27 schermate
五
「何うした秋」
「あれは楯岡の仕業でございます」
「楯岡?」
「私にいやらしい奉公をさせようと、手を代え品を変え苦しめております」
「――――」
妙な反感が、余吾之介の胸にこみあげます。
「余吾之介様、私は我慢がなりません、お願いでございます。せめて楯岡にだけでも思い知らせてやって下さいまし」
「よし、行ってやろう、向島の何処だ」
「御案内いたしましょう」
お秋は立上ると、小袖を取って投げかけるように着ました。キリキリと帯を締めると、小褄をとって、二つ三つ足踏みを、
「さア」
余吾之介はもう外に出ております。
「何んか持って参りましょうか」
「――――」
「鉄砲や脇差はありませんが、菜切庖丁か剃刀なり、よく切れるのならあります」
「馬鹿なッ」
「ホ、ホ、ホ」
一陣の薫風を先だてて、お秋も戸の外へ、懐かしそうに押し並んで余吾之介の顔を振り仰ぐのでした。
五
「此処か」
「シッ」
二人は守宮のように塀に吸付きました。向島――と言っても諏訪神社の裏手、寺島の百姓家に交って、寮造りの一と構えへお秋は案内して来たのです。
「楯岡甲斐は此処におります、山野辺は白鬚――」
「よし」
「何処から入りましょう」