Classici giapponesi con furigana
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クルスかんのん
十字架観音
野村 胡堂
Leggi 十字架観音 (クルスかんのん) di 野村 胡堂 (のむらこどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 13.655 caratteri · 27 schermate
「それ鴨がかかったぞ、逃すな」
八方から押っ取囲んで、膾になれと斬ってかかるのを、
「己れッ」
余吾之介も血に餓えておりました。刃を舞わすと、近間の一人を斬って落し、二人ばかりに手を負わせて、サッと縁側に飛び上りました。其処には、主人の山野辺右衛門大夫が、蔭ながら采配を揮っていると睨んだのです。
が、罠は到る処に用意されておりました。襖の蔭、縁の闇、凡そ物の隈のあるところには、悉く人を配置したといってもいいほどで――
「逃すな」
十人が二十人になり、三十人になり、最後には、飛道具や、さす又や、本職の捕物道具まで持出して、一人の余吾之介を、手負猪でも扱うように取詰めたのです。
余吾之介は、続けざまに斬り立てました。嘗て、山形藩随一の使い手と言われた腕は、異常な興奮に冴え返って、触るる者悉く斬って、自分も満身の返り血に蘇芳を浴びたようになってしまいました。
幸い手傷はおいませんが、相手に用意があるだけ、闘争が長引けば、たった一人の方が負けに決まっております
目ざす山野辺右衛門大夫は顔も見せません。
「卑怯な奴原、束になって来い」
二度、三度、猛烈な襲撃をくれ、さっと身を引くと、辛くも血路を開いて、余吾之介の身体は元の庭へ――