Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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クルスかんのん

十字架観音

野村 胡堂

Leggi 十字架観音 (クルスかんのん) di 野村 胡堂 (のむらこどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 13.655 caratteri · 27 schermate

Aozora Bunko

「この人を助けて下さい、私が訴人して磔柱に上げましたが、このまま火焙にしては、天主の御罰も恐ろしい」

そういうのは、浅草の町芸者お秋、磔柱の上に静かに眼をつぶって、召される運命を待っているのは、言う迄もなく余吾之介の許婚の鹿の子です。

「何を言う。さア、退かぬか、時刻が移る」

二三人の武士、お秋を手取り足取り引離そうとしましたが、必死と絡みついて引剥がしても引剥がしても離れません。見ると両手の生爪は剥げて、手から腕へ流るる血汐、

「いえいえ、私こそ切支丹宗徒、――首にかけた十字架を見て下さい、この人の代りに、私を、処刑して下さい、この人を殺してはなりません」

「えッ、二人とも磔柱に上げるぞ」

「私が代ります、私が切支丹です、お願い、お願いでございます、訴人した私が言うのです」

お秋は必死でした。大の男二三人の手も必死の女一人をどうすることも出来ません。

「これこれ、訴人した女が自分で言う事に嘘はあるまい、真実切支丹に相違ない者なら、囚人を代えても差支はあるまいとの仰せだ」

同心が二人、奉行米津勘兵衛の旨を承けて飛んで来ました。

必死の運命を観念して、磔柱の上に夢心地に祈っていた鹿の子は、このとき始めて目を開きました。