Classici giapponesi con furigana
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めいじんじごく
名人地獄
国枝 史郎
Leggi 名人地獄 (めいじんじごく) di 国枝 史郎 (くにえだしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 149.286 caratteri · 301 schermate
「というのは外でもない」周作はにこやかに笑ったが、「泰平の世の有難さ、わしの門弟は数多いが、剣の稲妻、血汐の雨、こういう修羅場を経て来たものは、恐らく一人もあるまいと思う。いやそれはない筈だ。しかるにそこにいる千代千兵衛という男、その男だけは経て来ている。恐らくこやつは博徒であろう。それも名のある博徒であろう。彼らの言葉で出入りというが、百本二百本の長脇差が、縦横に乱れる喧嘩の場を、潜って来た奴に相違ない。それも一回や二回ではない。幾度となく潜って来た奴だ。それは自然と様子で知れる。そこだ、陸上の水練の、役に立たないというところは! 胴をつけ面を冠り、しないを取っての試合など、例えどんなに上手になっても、一端戦場へ出ようものなら、雑兵ほどの役にも立たぬ。残念ではあるが仕方がない、これは実にやむを得ぬことだ」
こういって周作は、またにこやかに笑ったが、
「もうそろそろよいだろう。どれ」というと立ち上がり、田舎者の側へ寄って行った。この時までも緊りと、しないを握っていた十本の指を、まず順々に解いて行き、やがてすっかり解いてしまうと、上半身を抱き起こした。