Classici giapponesi con furigana
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よあけまえ
夜明け前
島崎 藤村
Leggi 夜明け前 (よあけまえ) di 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 205.629 caratteri · 408 schermate
この街道に伝わるうわさの多くは、諺にもあるようにころがるたびに大きな塊になる雪達磨に似ている。六月十日の晩に、彦根の早飛脚が残して置いて行ったうわさもそれで、十四日には黒船八十六艘もの信じがたいような大きな話になって伝わって来た。寛永十年以来、日本国の一切の船は海の外に出ることを禁じられ、五百石以上の大船を造ることも禁じられ、オランダ、シナ、朝鮮をのぞくのほかは外国船の来航をも堅く禁じてある。その国のおきてを無視して、故意にもそれを破ろうとするものがまっしぐらにあの江戸湾を望んで直進して来た。当時幕府が船改めの番所は下田の港から浦賀の方に移してある。そんな番所の所在地まで知って、あの唐人船がやって来たことすら、すでに不思議の一つであると言われた。
種々な流言が伝わって来た。宿役人としての吉左衛門らはそんな流言からも村民をまもらねばならなかった。やがて通行の前触れだ。間もなくこの街道では江戸出府の尾張の家中を迎えた。尾張藩主(徳川慶勝)の名代、成瀬隼人之正、その家中のおびただしい通行のあとには、かねて待ち受けていた彦根の家中も追い追いやって来る。