Classici giapponesi con furigana
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よあけまえ
夜明け前
島崎 藤村
Leggi 夜明け前 (よあけまえ) di 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 205.629 caratteri · 408 schermate
ちょうど、父吉左衛門は家にいて、例の寛ぎの間にこもって、もはや退役の日のしたくなぞを始めていた。祖父半六は六十六歳まで宿役人を勤め、それから家督を譲って隠居したが、父は六十四歳でそれをするというふうに。半蔵はこの父の様子をちょっとのぞいたあとで、南側の長い廊下を歩いて見た。オランダ留学生のうわさを思いながら、ひとり言って見た。
「黒船はふえるばかりじゃないかしらん。」
とうとう、半蔵は父の前に呼ばれて、青山の家に伝わった古い書類なぞを引き渡されるような日を迎えた。父の退役はもはや時の問題であったからで。
本陣問屋庄屋の三役を勤めるに必要な公用の記録から、田畑家屋敷に関する反別、年貢、掟年貢なぞを記しつけた帳面の類までが否応なしに半蔵の前に取り出された。吉左衛門は半蔵に言いつけて、古い箱につけてある革の紐を解かせた。人馬の公用を保証するために、京都の大舎人寮、江戸の道中奉行所をはじめ、その他全国諸藩から送ってよこしてある大小種々の印鑑がその中から出て来た。宿駅の合印だ。吉左衛門はまた半蔵に言いつけて、別の箱の紐を解かせた。その中には、遠く慶長享保年代からの御年貢皆済目録があり、代々持ち伝えても破損と散乱との憂いがあるから、後の子孫のために一巻の軸とすると書き添えた先祖の遺筆も出て来た。