Classici giapponesi con furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠10
中里 介山
Leggi 大菩薩峠10 (だいぼさつとうげ) di 中里 介山 (なかざとかいざん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 285.635 caratteri · 558 schermate
「ああ、何か事が起りましたな、間違いがなければいいが」
足をとどめ、胸をおさえて、行手の方を背のびするようにして注意しました。
それからいくらもたたない後のことであります、弁信が背のびをしてながめた行手の空が、ボーッと明るくなりました。
空が明るくなってみると、四方の森、林、山岳までが反射して、おぼろながら弁信の立っている野原の中の一つの姿も見え、そうして、その背後に、大竹藪が屏風をめぐらしたように囲んでいるのもわかりました。
「間違いがなければいいが――」
彼の懸念は的中したに相違ないのです。現に間違いが起ったればこそ、あの火の色。あれは尋常の火ではありません、非常の火であります。
その時分にはじめて、人の叫喚が夥しく聞えはじめました。ボーッと明るかったに過ぎなかった火が、炎のうらを見せはじめると、その赤味が天に冲して来ました。梨子地をまいたような火の子が、繚乱として飛びはじめました。
そう思うせいか、ちょうど、この時分になって四辺がザワついてきて、藪も、畑も、山も、林も、吹きまくるような風に襲われてきたようです。そうでなくても火事場は風の多いものを、ここに心あって吹く業火でもあるかのように、一時に襲い来った風のために、弁信の纏うていた黒の法衣を吹きめくられて、白衣の裾が現われてしまいました。