Classici giapponesi con furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠4
中里 介山
Leggi 大菩薩峠4 (だいぼさつとうげ) di 中里 介山 (なかざとかいざん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 264.133 caratteri · 524 schermate
「モシモシ」
と言って、霧のような靄の中から、不意に言葉をかけたものがありました。
それは、竜之助を見かけて呼んだものとしか思われないのであります。ナゼならば竜之助のほかにこの夜中に、ここらあたりを歩いている人があろうとは、竜之助自身も思い設けぬことでありました。
「モシモシ、少々お伺い致したいものでございますがねえ」
こう言いながら近寄って来るのであります。
近寄って来るところによって見れば、その背中で子供が泣きじゃくっているらしいことであります。竜之助は、ただ黙って立っていました。
ここにおいても竜之助は、その自身すら、自分に近寄って来る者の心のうちを推するに苦しみました。
ことにまだ乳呑児らしいのを背にして、この夜中に、人もあろうに、自分を呼びかける人の心は計られぬのです。
「モシモシ、少々お伺い致したいものでございますがねえ」
竜之助は近寄って来る者の足音に耳を傾けましたけれども、その足音は一人の足音です。その背に負うた子供のほかには、何者をも引きつれて来たとは思われません。況んやこの男をオトリにして、あとから与力同心だの、足軽小者だのいう者が覘い寄るというような形勢は更にありませんでした。