Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠5

中里 介山

Leggi 大菩薩峠5 (だいぼさつとうげ) di 中里 介山 (なかざとかいざん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 262.120 caratteri · 516 schermate

Aozora Bunko

「わたくしは、あの時から殿様のお姿を決して忘れは致しません」

女は何かに感激しているらしい声でこう言いましたから、甚三郎は、

「あの時とは?」

「それはあの、甲州へ参ります小仏峠の下の、駒木野のお関所で……」

「ははあ、なるほど」

ここにおいて駒井甚三郎は、さることもありけりと思い当りました。そうそう、初めて甲州入りの時、一人の女が血眼になって、手形なしに関所を抜けようとして関所役人に食い留められた時、駒井能登守の情けある計らいで、わざと目的地の方の木戸へ追い出させたことがある。それだ、その女だなと思いましたから、

「拙者はトンとお見忘れをしていた。そなたは、あれから無事に、尋ねる人を探し当てましたか」

「はい、おかげさまで……かなり長い間、甲州におりました。その間も、よそながら殿様のお姿をお見かけ申しました。一度、お訪ね申し上げて、あの時のお礼を申し上げたいと思わないではありませんでしたが、何を言うにもこの通りの賤しい女、恐れ多い気が先に立つばかりで、ついつい御無沙汰を致してしまいました」

「それを承ってみると、縁というものは不思議なものじゃ。拙者も今は、こんなふうに変っているが、そなたはまたどうして、あのような目に遭われた」