Classici giapponesi con furigana
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てんぽうのひこうじゅつ
天保の飛行術
野村 胡堂
Leggi 天保の飛行術 (てんぽうのひこうじゅつ) di 野村 胡堂 (のむらこどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 14.024 caratteri · 28 schermate
命を賭けて
「あッ」
という間もありません。お通を抱いた清作の身体は、そのままガラガラガラと一塊の石っころのように、底も知れぬ谷底に陥ち込んでしまったのです。
奥村主殿も、若党達も、あまりに不意の出来事に、暫くは口をきくことも忘れました。
「――――」
やがて、ぞろぞろと谷の口を覗いた若党達、遥かに藪と雑草を薙ぎ倒して、弾丸のように陥ち行く大小の石を眺めやり乍ら、顔を見合わせて引き揚げる外はなかったのです。
「此処へ陥ち込んでは命がありません、多分死骸も判らなくなったでしょう。谷底へ降りて行くには、大廻りに向うの峠を越して二日もかかるんですから」
事情に通じたのが、そんな事を言うのでした。
命を賭けて
「お通さん、お通さん」
清作は漸く起き上ると、自分の側に、――美しい半面を上にして気を失って居るお通を抱き起しました。
千仞の谷底に落ちた筈のが、なんという幸せか、僅か三十尺ばかり下の藪に引っ掛って、その下の崖に隠された、掌ほどの平地に、そっと落されていたのです。
「お通さん」
手を負った上、三十尺の崖を転がり落ちては、気絶するのも無理はありませんが、困ったことにこんな場所では、呑ませる水もなく、介抱する手段もありません。