Classici giapponesi con furigana
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てんぽうのひこうじゅつ
天保の飛行術
野村 胡堂
Leggi 天保の飛行術 (てんぽうのひこうじゅつ) di 野村 胡堂 (のむらこどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 14.024 caratteri · 28 schermate
谷底へ
「やいやいやい、何をするんだッ」
唐櫃を担いで来た若党達はいきり立ちました。不意に道を塞いだお通は、手拭を吹流しに冠って山風にチラチラと美しい片面を見せ乍ら、唐櫃の先をピタリと押えたのです。
「そんなものをお山に上げるわけには行かないよ、お帰りッ」
お通の声は凜として響きます。
「何を女、奉幣使様の唐櫃だぞ」
「だから止めるんじゃないか、白山は荒山だよ、そんな素姓の知れない荷物に名前を付けて、お前達のような汚れた人足が背負い上げちゃ、罰が当るよ、畜生ッ」
「な、なんだと、汚れは雌の方だ、退かねえと、谷底を見せてやるぞ」
「見せてもらおうじゃないか」
「何をッ」
立ち騒ぐ若党達の後ろから、奥村主殿と大野の鶴次郎が漸く追い付きました。
「お通じゃないか、高慢な啖呵を切って、止せ止せ、女だてらに、見っともないぞ」
主殿は苦々しく舌打ちをするのです。
「おや、奥村の殿様、――金沢のお城下じゃ御重役か知らないが、此処へ来れば、私の方がお山の主さ、――お前さんにも言い分はあるけれど、それは後にして、その後ろに隠れている野郎を出して貰いましょうか。――出てお出でよ、鶴次郎、――鶴公、――女一匹が怖いのかえ、二本手挟んだって、素姓は争われない、何をキョトキョトして居るんだよ、野狐野郎」