Classici giapponesi con furigana
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てんしゅものがたり
天守物語
泉 鏡花
Leggi 天守物語 (てんしゅものがたり) di 泉 鏡花 (いずみきょうか) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 20.593 caratteri · 42 schermate
ここは人間の来る処ではないのだから。――また誰も参らぬように。
図書 いや、私が参らぬ以上は、五十万石の御家中、誰一人参りますものはございますまい。皆生命が大切でございますから。
夫人 お前は、そして、生命は欲しゅうなかったのか。
図書 私は、仔細あって、殿様の御不興を受け、お目通を遠ざけられ閉門の処、誰もお天守へ上りますものがないために、急にお呼出しでございました。その御上使は、実は私に切腹仰せつけの処を、急に御模様がえになったのでございます。
夫人 では、この役目が済めば、切腹は許されますか。
図書 そのお約束でございました。
夫人 人の生死は構いませんが、切腹はさしたくない。私は武士の切腹は嫌いだから。しかし、思い掛なく、お前の生命を助けました。……悪い事ではない。今夜はいい夜だ。それではお帰り。
図書 姫君。
夫人 まだ、居ますか。
図書 は、恐入ったる次第ではございますが、御姿を見ました事を、主人に申まして差支えはございませんか。
夫人 確にお言いなさいまし。留守でなければ、いつでも居るから。
図書 武士の面目に存じます――御免。
雪洞を取って静に退座す。夫人長煙管を取って、払く音に、図書板敷にて一度留まり、直ちに階子の口にて、燈を下に、壇に隠る。