Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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きせつのないまち

季節のない街

山本 周五郎

Leggi 季節のない街 (きせつのないまち) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 201.379 caratteri · 394 schermate

Aozora Bunko

おるいさんは謙遜な顔でしんけんに否定した、「うちのような切詰めたくらしでそんな贅沢ができるもんですか、これは貰い物なんですよ」

まえに住んでいた家のすぐおもてに小さなそば屋があり、しょうばいがうまくいかなくなって世帯じまいをした。そのとき売れない物をまとめて捨てている中に、一と束の割箸があり、それを勿体ないから貰い受けた。そのあと、客のあるときに出して使ったが、割ってしまえば、もう客には出せない。けれども役に立つことがあるかもしれないし、「それを作った人のことを考えると」むざむざ捨てる気にもなれない、とおるいさんは云うのであった。

「どんなつまらないようなものでも、それを作る身になってみれば粗末にはできませんよ、ねえ、あなた」とおるいさんは云った、「たとえ紙一枚だって、それを漉くにはいろいろな手数や、辛いおもいをするんだっていいますもの、ほんとになに一つだって、形のある物は大事にしなければねえ」

これでおるいさんは、この街のかみさんたちのにんきを、一遍に集めてしまった。

主人の塩山慶三は酒もタバコもたしなまず、勤めを休むようなこともなかった。はる、ふき、とみの三人姉妹は、痩せていて顔色こそわるいが、温和しくてあいそがよく、親にさからったり、口答えをするようなことはなかった。