Classici giapponesi con furigana
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どんぐり
寺田寅彦随筆集 第一巻
寺田 寅彦
Leggi 寺田寅彦随筆集 第一巻 (どんぐり) di 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 203.161 caratteri · 412 schermate
穏やかな日光が広い園にいっぱいになって、花も緑もない地盤はさながら眠ったようである。温室の白塗りがキラキラするようでその前に二三人ふところ手をして窓から中をのぞく人影が見えるばかり、噴水も出ていぬ。睡蓮もまだつめたい泥の底に真夏の雲の影を待っている。温室の中からガタガタと下駄の音を立てて、田舎のばあさんたちが四五人、きつねにつままれたような顔をして出て来る。余らはこれと入れちがってはいる。活力の満ちた、しめっぽい熱帯の空気が鼻のあなから脳を襲う。椰子の木や琉球の芭蕉などが、今少し延びたら、この屋根をどうするつもりだろうといつも思うのであるが、きょうもそう思う。ハワイという国には肺病が皆無だとだれかの言った事を思い出す。妻は濃緑に朱の斑点のはいった草の葉をいじっているから「オイよせ、毒かもしれない」と言ったら、あわてて放して、いやな顔をして指先を見つめてちょっとかいでみる。左右の回廊にはところどころ赤い花が咲いて、その中からのんきそうな人の顔もあちこちに見える。妻はなんだか気分が悪くなったと言う。顔色はたいして悪くもない。急になま暖かい所へはいったためだろう。