Classici giapponesi con furigana
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どんぐり
寺田寅彦随筆集 第一巻
寺田 寅彦
Leggi 寺田寅彦随筆集 第一巻 (どんぐり) di 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 203.161 caratteri · 412 schermate
四
しかしこの「子供の私」は今でも「おとなの私」の中のどこかに隠れている。そして意外な時に出て来て外界をのぞく事がある。たとえば郊外を歩いていて道ばたの名もない草の花を見る時や、あるいは遠くの杉の木のこずえの神秘的な色彩を見ている時に、わずかの瞬間だけではあるが、このえびの幻影を認める事ができる。それが消えたあとに残るものは淡い「時の悲しみ」である。
自然くらい人間に親切なものはない。そしてその親切さは田舎の人の親切さとは全く種類のちがったものである。都会にはこの自然が欠乏していてそのかわりに田舎の「人」が入り込んでいるのである。
四
盆踊りというものはこのごろもうなくなったのか、それとも警察の監視のもとにある形式で保存されている所もあるかどうだか私は知らない。
私が前後にただ一度盆踊りを見たのは今から二十年ほど前に南海のある漁村での事であった。肺結核でそこに転地しているある人を見舞いに行って一晩泊まった時がちょうど旧暦の盆の幾日かであった。蒸し暑い、蚊の多い、そしてどことなく魚臭い夕靄の上を眠いような月が照らしていた。
貴船神社の森影の広場にほんの五六人の影が踊っていた。