Classici giapponesi con furigana
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どんぐり
寺田寅彦随筆集 第一巻
寺田 寅彦
Leggi 寺田寅彦随筆集 第一巻 (どんぐり) di 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 203.161 caratteri · 412 schermate
ねえ、お前もう一晩泊まっておいで」とすすめる。これにも「ウン」と鼻で返事する。「泊まるのはいいがねえさんに世話をおかけでないよ」と言っていよいよ一人で帰るしたくをせられる。立て場まで迎えにやった車が来たのでねえさんと門まで送って出た。車が柳の番所の辻を曲がって見えなくなった時急に心細くなって、いっしょに帰ればよかったと思う。「さあおいで」とねえさんは引っ立てるように内へはいる。
頭のぐあいがいよいよ悪くなって心細い。母上といっしょに帰ればよかったと心で繰り返す。けむる霧雨の田んぼ道をゆられて行く幌車の後ろ影を追うような気がして、なつかしいわが家の門の柳が胸にゆらぐ。騒々しい、殺風景な酒宴になんの心残りがあって帰りそこなったのか。帰りたい、今からでも帰りたいと便所の口の縁へ立ったまま南天の枝にかかっている紙のてるてる坊さんに祈るように思う。雨の日の黄昏は知らぬまに忍び足で軒に迫ってはや灯ともしごろのわびしい時刻になる。家の内はだんだんにぎやかになる。はしゃいだ笑声などが頭に響いてわびしさを増すばかりである。
姉上に、少し心持ちが悪いからと、言いにくかったのをやっと言って早く床を取ってもらって寝た。