Classici giapponesi con furigana
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あひるとさる
寺田寅彦随筆集 第五巻
寺田 寅彦
Leggi 寺田寅彦随筆集 第五巻 (あひるとさる) di 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 194.515 caratteri · 389 schermate
ところであろうが、時代の一転した一九三五年の給仕監督はきわめて事務的に冷静に米国ふうに事がらを処理していた。媚びず怒らず詐らず、しかも鷹揚に食品定価の差等について説明する、一方ではあっさりとタオルの手落ちを謝しているようであった。
しかし悲しいことにはこのたぶん七十歳に遠くはないと思われる老人には今日が一九三五年であることの自覚が鮮明でないらしく見えた。
この老人のやるせなき不平と堪え難き憤懣を傍観していた自分は、妙に少し感傷的な気分になって来た。なんだかひどくさびしいような心細いようなえたいの知れない気持ちが腹の底からわいて来るように思われた。
ずっと前のことであるが、ある夏の日銀座の某喫茶店に行っていたら、隣席に貧しげな西洋人の老翁がいて、アイスクリームを食っていた。それが、通りかかったボーイを呼び止めて何か興奮したような大声で「カントクサン、呼んでください。カントクサン、呼んでください」と繰り返している。やがてやって来たボーイ頭をつかまえて「このアイスクリーム、チトモツメタクナイ。ワタクシもう三つ食べました。チトモツメタクナイ。――。ツメタイノ持って来てください。