Classici giapponesi con furigana
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あひるとさる
寺田寅彦随筆集 第五巻
寺田 寅彦
Leggi 寺田寅彦随筆集 第五巻 (あひるとさる) di 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 194.515 caratteri · 389 schermate
大きい炭取りくらいの大きさの竹かごを棒切れの先に引っかけたのを肩にかついで、跛を引き歩きながら「丸葉柳は、山オコゼは」と、少し舌のもつれるような低音で尻下がりのアクセントで呼びありくのであった。舌がもつれるので「山オコゼは」が「ヤバオゴゼバ」とも聞こえるような気がした。とにかく、この山男の身辺にはなんとなく一種神秘の雰囲気が揺曳しているように思われて、当時の悪太郎どもも容易には接近し得なかったようである。自分もこの老いさらぼえた山人に何とはなしに畏怖の念をいだいていたが、しかしその「山オコゼ」というのがどんなものだか知りたいという強い好奇心を長い間もちつづけていた。それでとうとう母にねだって二つ三つの標本を買ってもらった。それは、煙管貝のような格好で全体灰色をした一種の巻き貝であって、長さはせいぜい五六分ぐらいであったかと思う。もちろん貝がらだけでなく生きた貝で、箱の中へ草といっしょに入れてやるとその草の葉末を蓑虫かなんぞのようにのろのろはい歩いた。海でなくて奥山にこんな貝がいるというのがいかにも不思議に思われたが、その貝の棲息状態などについてはだれも話してくれる人はなかった。