Classici giapponesi con furigana
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こざくらひめものがたり
小桜姫物語
浅野 和三郎
Leggi 小桜姫物語 (こざくらひめものがたり) di 浅野 和三郎 (あさのわさぶろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 136.097 caratteri · 267 schermate
ナニその時分の記憶を物語れと仰っしゃるか……随分遠い遠い昔のことで、まるきり夢のような感じがするばかり、とてもまとまったことは想い出せそうもありませぬ。たしか走水という所は浦賀の入江からさまで遠くもない、海と山との迫り合った狭い漁村で、そして姫のお祠は、その村の小高い崖の半腹に建って居り、石段の上からは海を越えて上総房州が一と目に見渡されたように覚えて居ります。
そうそういつか私がお詣りしたのは丁度春の半ばで、あちこちの山や森には山桜が満開でございました。走水は新井の城から三四里ばかりも隔った地点なので、私はよく騎馬で参ったのでした。馬はもちろん例の若月で、従者は一人の腰元の外に、二三人の家来が附いて行ったのでございます。道は三浦の東海岸に沿った街道で、たしか武山とか申す、可成り高い一つの山の裾をめぐって行くのですが、その日は折よく空が晴れ上っていましたので、馬上から眺むる海と山との景色は、まるで絵巻物をくり拡げたように美しかったことを今でも記憶して居ります。全くあの三浦の土地は、海の中に突き出た半島だけに、景色にかけては何処にもひけは取りませぬようで……。