Classici giapponesi con furigana
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ろうじゅうのめがね
小笠原壱岐守
佐々木 味津三
Leggi 小笠原壱岐守 (ろうじゅうのめがね) di 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 57.249 caratteri · 115 schermate
「致しました。どこに悪いところがあるやら、こんなに人気の沈んだことはない。まるで生殺しに会うているようじゃ。死ぬものなら死ぬように。立直るものならそのように、早うどちらかへ片がつかねばやり切れぬ、とこのように申しておりまして厶ります」
――まさにそれは地の声だった。尊王攘夷と開港佐幕と、昨是今非の紛々たる声に交って、黒船来の恐怖心が加わった、地に鬱積している不安動揺の声なのである。
対馬守は黙然として、静かに歩いていった。
右は水を隔てて高い土手。左は御三家筆頭水戸徳川のお上屋敷である。――その水一つ隔てた高い土手のかなたの大江戸城を永劫に護らせんために、副将軍定府の権限と三十五万石を与えてここに葵柱石の屋敷をも構えさせたのに、今はその水一つが敵と味方との分れ目となって、護らねばならぬ筈の徳川御連枝たる水藩が、率先勤王倒幕の大旆をふりかざし乍ら、葵宗家に弓を引こうとしているのだ。
「館!」
対馬守は、いかめしい築地塀を打ち睨むようにし乍ら卒然として言った。
「のう館!」
「はっ」
「人はな」
「はっ」
「首の座に直っておる覚悟を以て、事に当ろうとする時ほど、すがすがしい心持の致すことはまたとないな。