Classici giapponesi con furigana
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ばくまついしんかいこだん
幕末維新懐古談
高村 光雲
Leggi 幕末維新懐古談 (ばくまついしんかいこだん) di 高村 光雲 (たかむらこううん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 3921 caratteri · 8 schermate
この妙な状態を或る人が見たのでした。その人は私の師匠東雲師を知っている人であった。話を聞くと、これこれというので、その人も随分驚いた。音に名高い本所五ツ目の羅漢寺の、あの蠑螺堂に納まっていた百観音のお姿が、所もあろうにこんな処へ縛られて来て、今にも火を点けて焼かれそうになっているのだから、驚いたも無理はありません。その人は、何んとかして、この危急な場合を好い都合に運びたいものと考えたと見え、かねて知人である仏師東雲へこの話しをしたら、何んとかなろうと思ったのでしょう。その人は、吾妻橋を渡って並木の方から東雲師の店(当時は駒形に移っていた)を差してやって来たのでした。
その日は暑い日でした。何月頃であったか、表通りの炎天を見ながら、私は店頭で仕事をしていました。其所へ一人の人が尋ねて来た。
「師匠はお宅ですかね」
「師匠は朝から山の手へ要事があって出掛けましたが……」
私がそう答えますと、その人は失望したような表情をしました。
「そうですか。じゃあ、ちょっとは帰りませんね。ああ、生憎だなあ……惜しいことだなあ……」
と、何か容子ありげに嘆息しております。