Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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あいのごとく

愛のごとく

山川 方夫

Leggi 愛のごとく (あいのごとく) di 山川 方夫 (やまかわまさお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 103.908 caratteri · 210 schermate

Aozora Bunko

ひっそりと静まりかえった夜の中に、跡切れながらなおもつづく音は、複数の人間のたてるそれではなかった。あれはただ一人の人間が、「物」を相手に立てている音だ。きっと、夫が妻を絞殺し、あと始末をしているのだ。……ひそやかに、しかし明瞭につづく鈍い物音には、本気で私にそう思わせるだけの不気味さがこもっていた。私は胸がおどり、期待で顔が赤くなった。

便所を出て、私はそっと鍵穴に目を近づけ、中を覗いた。心のどこかで私は真紅の血の海さえ予想していたのかもしれない。が、せまくぼやけた視野の中で、しだいに私の目にあきらかになってきたのは、こちらに尻を向けた、まるで芋俵のように縛られた細君の裸体だった。一本のやはり裸の男の脚が、器用にその裸体をころがし、向きをかえる。斜め上に、真剣な顔でその細君を見下ろしている紅潮した若い夫の顔が見えた。

びっくりして私は鍵穴から顔をはなし、自分の目を疑うような気分でふたたび覗きこんだ。明るい電灯の輝く八畳の整理箪笥の前に、細君は白い細紐でがんじがらめに縛られ、やや弓なりの姿勢で、真裸でじかに畳にころげている。充血したような赤い顔を仰向け、うすく目を閉ざし腹を波うたせて、喘ぐようにその脣が開いている。