Classici giapponesi con furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Leggi 新書太閤記 (しんしょたいこうき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 200.320 caratteri · 398 schermate
「料紙、硯筥があるか」
「備えてございます」
「これへ」
と、信長も、さきほどから、実は何か考えこんでいたらしいのである。――で、蘭丸が、妨げぬように沈黙をつづけていたので、自分の思案顔に、ひとの顔まで、思案顔に見えたのかも知れない。
蘭丸は、硯の面へ、水滴からわずかをこぼして、静かに墨を下ろした。気みじかな信長は、料紙と筆とを手にして、もう待っている。近頃になく、その眉に、険しいものが潜んでいる。
「これに置きました」
「うむ、む……」
と、のみである。
――蘭丸はあとへさがった。衣摺れも憚るようにである。信長は、何やら苦念しては書き、書いては眉を恐くしている。まったく、きついお顔である。敏感な蘭丸は、
――これはただ事でない。
と、ひそかに寒い思いがした。
人には、ゆめ、語れることではないが、蘭丸自身にも今、心痛にたえないものがあるのだった。――それと信長の眉のむずかしさと見くらべて、
「――何か、この身に」
と、そぞろ惧れられたのである。
幼少から多年、信長に近侍しているので、信長の感情をその眉や唇に見ることは、誰よりも敏い蘭丸であっただけに、
(きょうのお書き物は、凡事ならじ……)