Classici giapponesi con furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Leggi 新書太閤記 (しんしょたいこうき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 200.320 caratteri · 398 schermate
と、いった。
内蔵助利三は、その前へ一巻の画軸を展げて、
「かような物を置き残してまいりました。忘れ物かと思いましたが、よく見ますと、まだ墨の痕も乾いておりませぬ。……思うに、昨夜殿からおたのみ遊ばした絵手本をすぐ思い立って、ゆうべあれから眠らずに朝まで画いていたものと考えられます」
「なに、寝ずに」
光秀は、画巻のうえに、ひとみを落した。朝の光になおさら白い紙のなかに、みずみずと大輪の牡丹一枝が描かれていた。そしてその絵の肩に文字があった、「無事是貴人」と賛語してある。
「無事是貴人」
口のうちに誦みながらそこを巻いてゆくと、大きな蕪之図が繰り展べられた。蕪の題語には、
客来一味
と、ある。
何の苦心もなく一抹したかのような墨画の蕪であったが、見入っていると、土のにおいが鼻をつくばかり迫って来る。大地の生命をそのまま一茎の葉とはちきれそうな根にもった蕪の野性は、甚だしく無邪気にまた屈託なく、光秀の理性を嗤っているかのようであった。
「…………」
あとは、いくら繰り展げても、何も描いてなかった。余白のほうが遥かに多い。
「この二図で、夜が明けてしまったものとみえますな」