Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Leggi 新書太閤記 (しんしょたいこうき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 192.758 caratteri · 383 schermate

Aozora Bunko

馬の手綱を拝殿の廻廊柱につないでから、身をゆすぶって、鎧の袖やふところの水を走らせ、二ノ谷の兜を脱いで、神前に置いた。

そして矢立を取り出した。筆を持って御堂の前に立ったのである。やがてそこの白壁にこう書いた。

明智左馬介光春、ただいま湖水を乗り渡し候ふ馬也。年来の忠勤をいたはる暇もなく訣別をつぐ。誰にてもあれ、我に劣らぬもののふにこの大鹿毛を給ふべきなり。愛で給へかし。

筆を捨てて、階を降りると、左馬介は、大鹿毛の濡れ寝ている鬣を幾たびも撫でて、

「鹿毛よ。おさらばだぞ」

と、人に語るように云った。

大鹿毛は鼻をすり寄せて、彼の肩へ顔を載せた。あだかも甘え泣いているようである。光春はその頸を抱えながら、あなたの唐崎の松をながめて、ふとこう吟じた。

われならで誰かは植ゑん一つ松

こころして吹け志賀の浦かぜ

この一首は、かつて光春が、初めて坂本の城を領したとき、唐崎に記念の松を植えさせ、その折、それに寄せて詠んだ和歌である。

何で、その歌がいま左馬介の口に出たか、左馬介にもわからない。ただ、説明できることは、こんなとき人間は、何か無性に鬱懐を放ちたくなる。