Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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しゅんもう

春盲

豊島 与志雄

Leggi 春盲 (しゅんもう) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 8296 caratteri · 17 schermate

Aozora Bunko

「なにをしていらしたの。」

いつも同じ挨拶だ。彼はにやりと無意味に笑った。

柱掛けの一輪※(「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2-13-28)しに、もう蕾の開きかけた桜の一枝が投げ込んであった。山田はそれをぼんやり眺めた。

「もう花もじきですわね。青葉もじきですわね。」

「ええ。」

「花はどうでもいいけれど、新緑を見にちょっと旅がしたいわ。」

「そう。」

「新緑を見に、一泊か二泊、どこかへ連れていって下さると、お約束だったでしょう。」

「ええ。」

「ほんとに連れていって下さるの。」

「ええ。」

「いつ。」

「ええ。」

「それとも、旅はお嫌なの。」

「ええ。」

「はっきりしてよ。連れていって下さるか、下さらないか、どちらですの。」

「ええ。」

「わたしほんとに行きたいわ。新緑を眺めて、一日か二日、ゆっくり考えたら、わたしたちの前途も、ほんとに開けてくるような気がするの。だから、行きましょうよ。」

「ええ。」

「いつにしましょうか。わたしの方はいつでも宜しいの。」

「ええ。」

美津子はしばらく口を噤んだ。

「あ、分った。今日は、あなたの陽が陰ってるのね。」

「そうですよ。陽が陰ってる時は、僕は誰にも逢いたくないし、誰とも口を利きたくないんです。