Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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しゅんもう

春盲

豊島 与志雄

Leggi 春盲 (しゅんもう) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 8296 caratteri · 17 schermate

Aozora Bunko

終戦後、東京都内にも小鳥がたいへん多くなった。殊に山の手の住宅街にそうである。空襲による焼野原が至るところに拡がっていて、人家はまだ点在的にしか建っておらず、植えられた樹木も灌木の如く小さい。随って、焼け残りの街衢は、荒野の中に小さな聚落をなし、こんもりとした樹木の茂みに包まれて、町ではなく村である。そういう部落の木立をしたって、小鳥たちが集まっているのであろうか。

以前には見られなかったようないろいろな小鳥がいる。以前には聞かれなかったようなさまざまな鳴き声がする。おかしいのはチョットコイ鳥だ。姿は殆んど見せず、木の茂みの中をあちこち飛び移って、チョットコイ、チョットコイと鳴く。ちょっと来い、ちょっと来い。誰かが呼んでるのかと思って、覗いてみても、声はやみ、姿は見えず、やがてまた何処からともなく、ちょっと来い、ちょっと来い……。

山田は溜息をつく。煩いのだ。うら悲しいのだ。心嬉しいのだ。どこか擽ったいのだ。いろんな感情がごちゃごちゃ入り交って、そしてやはり、その声が待たれるのである。ちょっと来い、ちょっと来い。

実は、鳥の声ではない。美津子からの結び文だ。