Classici giapponesi con furigana
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くりのはなのさくころ
栗の花の咲くころ
佐左木 俊郎
Leggi 栗の花の咲くころ (くりのはなのさくころ) di 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 6440 caratteri · 14 schermate
そのうちに両手がわなわなと顫え出して来た。そして彼の眼頭には、ちかちかと涙さえ光って来た。
「郵便が来たんじゃねえかね?」
松代がそう言いながらそこへ出て来た。
「美津の畜生め!」
嘉三郎は突然そう怒鳴って、手にしていた手紙を滅茶滅茶に引き裂いた。
「何をするんだね? お父さんは! それで美津は、どこにいるんだね?」
「美津の畜生め? 俺の顔に泥を塗りやがって、いくらなんでも鼻の先にいべえとあ思わなかった。」
「美津はどこにいるんだね?」
「忠太郎の野郎と一緒に高清水にいやがるで、忠太の恩知らず野郎め! 泥足で俺の顔を踏みつけやがって。」
「忠太郎と一緒にいるのかね? 最初からそんなような気がしていたよ。忠太郎ならいいじゃねえかね?」
「馬鹿!」
嘉三郎はまたそう怒鳴った。そして髭を剃るのをやめて、黙々と、炉端へ行って坐った。松代は怖々と、炉端へ寄って行った。そしてお互いにしばらく凝っと黙っていた。嘉三郎は眼を伏せるようにして、溜め息をつきながら炉の上に屈み込んでいたが、灰の上にぽとりと涙が落ちた。嘉三郎は、涙をそっと押し隠すようにしながら静かに顔を上げた。
「松! 着物を出せ!」