Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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さくらじま

桜島・日の果て・幻化

梅崎 春生

Leggi 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) di 梅崎 春生 (うめざきはるお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 169.810 caratteri · 345 schermate

Aozora Bunko

人知れず、難破を予感して船倉から逃れ出る鼠のように逃げたくはなかった。善いにしろ悪いにしろ邪魔物を押し分けて逃げたかった。抵抗を感ずることによって自らの行為を確かめたかったのだ。指で傷口を押し拡げることによって、傷の深さを確かめるように。――

三十分ばかり黙って宇治はあれこれと考え悩みながら歩いた。やがて道に沿った小部落らしいものが見えて来た。ニッパの屋根が樹々の間から見え隠れしたと思うと、道の曲りに沿って四五軒の汚い小屋が不規則な形で集っているのが宇治の視線に止った。荒れた感じなので久しく無人であることが一目で判った。宇治は肩を落しながら何となく其処に入って行った。籾を搗くきねが二三本床に転がっているばかりで柱ももはや朽ち始めていた。酢に似た匂いがうっすらと四辺に立ちこめていた。湿った地面を踏んで横手に廻ると、其処は羊歯の乱れ茂る間に傾き立った小屋であった。屋根から裂け下ったニッパの古葉の隙間から、その小屋の床に、何か黒い形のものが横たわっているらしい。思わずぎょっと右手で拳銃を押えながら、宇治は目を凝らして近づいた。それは日本の兵隊であるらしかった。