Classici giapponesi con furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Leggi 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) di 梅崎 春生 (うめざきはるお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 169.810 caratteri · 345 schermate
桜島
七月初、坊津にいた。往昔、遣唐使が船出をしたところである。その小さな美しい港を見下す峠で、基地隊の基地通信に当っていた。私は、暗号員であった。毎日、崖を滑り降りて魚釣りに行ったり、山に楊梅を取りに行ったり、朝夕峠を通る坊津郵便局の女事務員と仲良くなったり、よそめにはのんびりと日を過した。電報は少なかった。日に一通か二通。無い時もあった。此のような生活をしながらも、目に見えぬ何物かが次第に輪を狭めて身体を緊めつけて来るのを、私は痛いほど感じ始めた。歯ぎしりするような気持で、私は連日遊び呆けた。月に一度は必ず、米軍の飛行機が鋭い音を響かせながら、峠の上を翔った。ふり仰ぐと、初夏の光を吸った翼のいろが、ナイフのように不気味に光った。
或る朝、一通の電報が来た。
海軍暗号書、「勇」を取り出して、私が翻訳した。
「村上兵曹桜島ニ転勤ニ付至急谷山本部ニ帰投サレ度」
午後、交替の田上兵長が到着した。
その夜、私はアルコールに水を割って、ひとり痛飲した。泥酔して峠の道を踏んだ時、よろめいて一間ほど崖を滑り落ちた。瞼が切れて、血が随分流れた。窪地に仰向きになったまま、凄まじい程冴えた月のいろを見た。