Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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さくらじま

桜島・日の果て・幻化

梅崎 春生

Leggi 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) di 梅崎 春生 (うめざきはるお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 169.810 caratteri · 345 schermate

Aozora Bunko

すぐ老獪なとぼけた顔になって、

「花田中尉は良い軍医どのでありましたなあ」

宇治はいら立って軍刀の先で土間をとんとんとついた。

「そんなことを聞いていはしない」

その時先刻の病兵の言葉が急によみがえって来た。男は宇治の視線を避けて、寝ころんだ女の姿をぼんやり眺めている風である。それは明かに装った態度であった。女は何か判らぬことをひとりで呟いている。宇治は顔を男の方に近づけながら、眼を堅く光らせて一語一語力をこめて言った。

「花田中尉は女を連れて、東海岸に行ったのだろう。俺は彼を捕えに来たんじゃない。話があるんだ。何と言って口止めされたんだ」

その言葉を聞くと男は突然低い濁った声でふふとわらい出した。ゆるゆる視線を宇治に戻しながら、

「出て行ったのは昼頃でしたよ」

「何故お前も一緒に東海岸に行かなかったんだね」

男は又卑しげに唇を歪めて、短い笑い声を立てた。

「この女が居るんでね」

「お前は何処から来たんだね。恰好から見ても兵隊じゃないらしいが――」

お前と呼ばれるのが男のかんにさわるらしかった。床をすざって宇治から離れながら、急にぞんざいな調子になった。

「マニラからでさ。