Classici giapponesi con furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Leggi 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) di 梅崎 春生 (うめざきはるお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 169.810 caratteri · 345 schermate
宇治もかすれた声でそう言いながらまた三歩足を踏み出したとたん、花田は何故かぎょっとしたように再び身体を引いた。花田の右手が身体を滑りながら洋袴の方に伸びて行く。何か不自然な身のこなしであった。洋袴の物入れには何があるのか。花田は急に笑いを頬から消し突然右掌を胸に上げたのだ。花田の掌にあるものは鈍色にひかる小さな拳銃であった。全身の血が凍りつくような気がして、宇治は顔色を変えて身構えた。宇治の右手も無意識の中に略刀帯の拳銃にかかっていた。宇治を見つめる花田の顔は真蒼で、その瞳はぎらぎら燃えるようだった。
「待て!」
宇治が全身でそう叫ぶのよりも早く、花田の指が撃鉄を引いた。衝撃的な戦慄が宇治の身体を瞬間にして奔り抜けた。カチリと冷たい音が落ちた。
――不発だ!
宇治は全身からふき出た汗が急速に冷えて行くのを感じながら、それと一緒にこみ上げて来る兇暴な喜びを意識して、素早く自らの拳銃を胸に擬した。花田はまっさおな唇を半ば開き、拳銃をにぎった腕を斜めに曲げて胸のあたりをおおい、哀願するように身体を伏せようとした。花田の眼の中に絶望の色があふれるのを宇治は見た。