Classici giapponesi con furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Leggi 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) di 梅崎 春生 (うめざきはるお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 169.810 caratteri · 345 schermate
それから部屋に戻って来て、何もすることが無かったから、寝床をしいて無理矢理に眠った。わけのわからない夢が切れたりつながったりしていたとき、風が出て来たと見えて、私は頭のどこかで濁った風の音を遠くに聞いていた。硝子戸越しに喬木の梢が坐っている私の眼に見える。医学書にある神経図に似た梢が俄にゆらゆらと動いた。それと一緒に硝子にあたる風の音を私は聞いた。私は手を伸ばして窓をあけた。
窓の外には墓場がある。葉が落ち尽した、小魚のように小骨が多い樹。石で造った墓や四角の木や薄い板の墓標。寺の本堂の屋根瓦が弱い入日を受けて黝く照り返している。そこのあたりを空しい音立てて風が吹いた。
私は学校の制服に着換えながら、墓地を見おろしていた。墓標の長い影や、花立てに枯れかかった白い菊や、毎日眺めている景色ではあったけれど――貧しい、何か貧しいと、遠い日の悔恨のようにその風物は私ににがさを強うるものがあったのだ。
胃のあたりが妙に重かった。私は廊下に出て鍵をかけ、忍び足で廊下を歩いた。
低く連なった家並の上にあかあかと落日がかかる駒込蓬莱町の坂道を、私はうなだれてあても無く登って行った。