Classici giapponesi con furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Leggi 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) di 梅崎 春生 (うめざきはるお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 169.810 caratteri · 345 schermate
私は此の部屋にじっとすわっていることに、一種の不快な亢奮を感じて、呼吸をぐっととめた。娘の名を連呼する泣声が再び烈しく起った。嗚咽の声が俄に高まって来た。それにつれて、私の体にある袋のようなものがふくれたり小さくなったりするのが堪えがたく切なく感じられた。呼吸が出来なかった。きみちゃん! きみちゃん! きみ……その呼声は乱れながら、押しつぶされたすすり泣きになって行った。堪えかねてつっぷした気配が壁を越えてはっきりとわかった。そして荒涼たる夜気をはらんで、風が号泣の間を縫った。
「死んだんだな」
と旅川が低い声で言って、目を落した。旅川や、天願氏ですら、居てもたってもいられない気持でいるのがじかに私の胸に響いて来た。
「厭だな」
「何だか厭だな」と私は思わず相槌を打った。そういう言葉でしかこの気持があらわせなかった。指先がしびれるような感じに堪えながら、お互が生きているということに漠然たる厭悪感を感じていた。
天願氏は極端に憂欝そうな表情をして壁に倚りかかり、怒ったような声を出した。
「この部屋を出よう。どこかお茶飲みに行こう」
私達は立ち上った。足音を忍ばせるようにして廊下に出た。