Classici giapponesi con furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Leggi 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) di 梅崎 春生 (うめざきはるお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 169.810 caratteri · 345 schermate
私は盃を取り上げた。うっすりとほこりを浮べている。そこに電灯が豆粒ほど小さく映り、私の手に随ってふるえた。此の世のものならぬ美しい世界が此の盃の底にある。私は盃に唇をつけた。酒は冷えてにがかった。私はある種の衝動に似た残忍な欲望を感じながら、一息に飲みほした。おばさんが手を伸ばして、また酒をとくとくとついだ。
窓に風があたる音がした。頭がぼんやりして何が何だかはっきりしなかった。座が乱れ果てたこともそう気にならなかった。唐紙のところには、巨大な徳利が数え切れないほど立ち並んでいる。すみの方で女中を相手に飲んでいたらしい一群の間から、歌をうたおうじゃないかと言う声がした。
「歌ってもいいだろう」と賛成を求める声がした。
「歌ってもいいものかな?」
「お通夜というものはも少し静かに飲むべきじゃないですかねえ」
あちこちから声がする。
「あのこは歌が大好きだったから」
「仏が好きだったんならやったがええ」
「天願さんうたいませんか」
天願氏はモナリザのおばさんに一生懸命に宗教のことを話している。おばさんは不服らしく時々口をさしはさんだりしている。天願氏は手をひらひらと振った。