Classici giapponesi con furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Leggi 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) di 梅崎 春生 (うめざきはるお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 169.810 caratteri · 345 schermate
ぼんやり聞いていた。吉良兵曹長がふと私の方に向きなおった。
「村上兵曹。何か電報があったか」
濁ったその眼が、射るように光った。交替前の電報のことが、再び頭をよぎった。
「ソ連軍が、国境を越えました」
私の言葉が、吉良兵曹長に少なからぬ衝動を与えたらしかった。しかし、表情は変らなかった。黙ってコップをぐっとほした。長い指で、いらだたしげに卓の上を意味なく二三度たたいた。
「参戦かね」
「それはどうか判りません。電報では、交戦中と言うだけです」
私は吉良兵曹長の顔をじっと見つめていた。無表情な頬に、何か笑いに似たものが浮んだ。ぞっと身をすくませるような、残忍な笑いだった。私は思わず目を外らした。食器をかたむけて、麦酒を口の中に流し込んだ。再び瓶を傾けて、食器についだ。酔いがようやく廻って来るらしかった。手足の先がばらばらにほぐれるような倦怠感が、快よく身内にしみ渡って来た。
ずっと向う側の卓で、話し声が漸く高くなって来た。上半身裸になって、汗が玉になって流れている。出口の方に、黄昏の色がうすれかかった。どうにでもなれと思って、私は肱を卓についたまま、ついでは飲み、ついでは飲んだ。