Classici giapponesi con furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Leggi 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) di 梅崎 春生 (うめざきはるお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 169.810 caratteri · 345 schermate
窓がひろく取ってあるので割りに明るかったが、竹のすだれで区切る奥の方は薄暗く、そこに床をつらねて病傷兵が寝ているらしい。鋭い消毒薬の臭いに混り、青臭い病臭がほのかに漂っていた。窓の外からは高く低く籾搗き歌が流れて来る。右手の小入口の外側で突然、
「道に迷ったって。嘘をつくな。逃げようと思ったんだろう」
何か固いものが肉体にパシパシと当る音がした。
「いえ、伍長殿。ほんとに迷ったのであります」それから声が低くなり何かくどくど言う声音であったが、声が途断れると又急に殴るらしい気配がした。
「――いいか。それは判っとる。目下の状況では配置を一旦離れたら、逃亡と見なされても仕方がない。判ったか。判ったらかえれ」
抑えた嗚咽がそれに続いて聞えた。衛生兵等は感動の無い様子で黙々と仕事をつづけている。彼は刀を床に立て眼を閉じ、じっとそれを聞いていた。暫くして右手の小入口から扉を押し、高城伍長がのっそりと部屋にあがって来た。顔が少し紅潮している。宇治の姿を見て立ち止まったが、若々しい声で、
「見習軍医殿はおいでになりません」
宇治は身振りで、ついて来いと合図をし、黙って刀を提げたまま外に出た。