Classici giapponesi con furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Leggi 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) di 梅崎 春生 (うめざきはるお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 169.810 caratteri · 345 schermate
医務室にもろくな薬がないのが判っていたし、診察を受けても意味のないことは明かであったから、宇治は誰にも言わず今まですごして来たのだ。彼は今年三十三歳になる。三十歳を越せば病状の進行もゆるやかであるということは彼も知っていたが、それも平和な市民の生活をしている場合のことであった。遠からず砲弾か銃剣で死ぬことが予想出来るのに、何を病状を苦にすることがあろうと、時に冷たく笑いがこみ上げて来ることもあったが、ふしぎなことには痰の中の血のいろを見ると彼は生きたいという欲望が猛然と胸の中に湧き起って来るのが常であった。
――自然に踏みならされた石階を降りると、洞窟の入口であった。乾いた風が洞の奥から絶えず吹いて来て、彼は目を細めながら入って行った。入口の近くが自然の広間になって居て、彼の部下たちがもはや仕事にかかっていた。彼の姿を見ると皆立ち上って挙手の敬礼をした。黒い粉末を容器に詰める仕事をしていた松尾軍曹が、歯をのぞかせて笑いかけながら言った。
「中尉殿。今日は顔色がすぐれませんね」
彼はあいさつを皆にかえしながら、突然激しい羞恥の念が胸いっぱいにひろがった。