Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

Leggi 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 112.073 caratteri · 223 schermate

Aozora Bunko

「はいるな、お客だ」と与五兵衛が云った。

二人は小屋の戸口で棒立ちになり、頭巾をぬぎながら、互いに眼を見交わした。

「おれなら構わない、入れてやれ」と周防が云った。

与五兵衛は二人に顎をしゃくってみせた。

かれらはまた眼を見交わし、ぐずぐずと蓑をぬいで、はいって来た。二人とも泥だらけの雪沓をはいていた。

「なんだ」と与五兵衛がひどい山訛りで訊いた。

「ふじこが来ていないですか」と文造が訊き返した。

かれらの問答は、そのひどい山訛りよりも、緩慢なところに特徴があった。問いかけるにも答えるにも、おのおの五拍子ぐらい時間がかかる。相手の問いかけがわからないか、それとも云うべき言葉を忘れたのかと思われるころ、ようやく、それを極めてゆっくりと、口を切るのであった。

「ふじこがどうした」

「殿さまについていったままです」

「殿さまにだって、またか」

「おとつい出たままです」

「なにか心配になることでもあるのか」

「嫁にやるですよ」

「ふじこは、おらが家の久兵衛の嫁にもらうです」と平助が云った。

与五兵衛は平助を見、それから文造を見、そして口をもぐもぐさせた。すると、顔半分を掩っている髭が生き物のように動いた。