Classici giapponesi con furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Leggi 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 145.078 caratteri · 285 schermate
「ええ」と彼は呻いた、「面倒だ」
そして椀を力いっぱい投げつけ、前にある膳を手でひっくり返した。椀は壁に当ったらしい、こつんという音がし、放りだされた皿小鉢が荒あらしい音を立てた。そこへ、廊下を小走りに来る足音がし、女が若い男を二人伴れてはいって来た。
「この人、まあ、――」と女が叫んだ、「ごらんよ、こんなひどいことをして」
「野郎」と一人が云い、他の一人が「まあ待て」と制止した。
「お侍さん」とその制止した若者が云った、「おまえさんこんな乱暴なことをして、この店になにか意趣でもあるのかい」
六郎兵衛は黙ってい、男の一人が横へまわるのを、けはいで感じとった。
「ここは神田だ」と同じ若者が云った、「お膝元でもいちばん気の荒い土地だ、へんなまねをすると侍だって容赦はねえ、半殺しのめにあわされますぜ」
「なにも意趣などはない」六郎兵衛はふるえながら云った、「俄かめくらのうえに勘が悪くて、つい手がすべったのだ」
「野郎」と横のほうでべつの若者がどなった、「この野郎、しらばっくれるな」
「待てよさぶ」とまえの若者が押えた、「相手はめくらで手がすべったと云ってるんだ、そうでしたねお客さん」