Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

Leggi 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 145.078 caratteri · 285 schermate

Aozora Bunko

たのです、耳馴れない音調で、初めはなんの気もなく聞いていたのですが、そのうちに躯がふるえだし、これだと思うと矢も盾もたまらず、すぐに立ってその人を訪ねました」

甲斐は頷きながら、盃を含んだ。

「訪ねてみると、二絃琴を弾く盲人でした」と新八は続けた、「中年から盲人になり、たつきのために、その二絃琴と唄をくふうしたということでしたが、私は自分の事情をうちあけたうえ、教えを求めたのです」

盲人はこころよく承知した。そして、新八の三味線を聞いてから、いろいろと助言をし、自分の音調の勘どころを伝えた。

「いまの節はそれをさらに練り直したものですが、要はそのとき教えられたものでございます」

「こちらにその気さえあれば、道の師はどこにでもあるものだ」と甲斐が云った、「その盲人はまだいるのか」

「いや、三十日ほどまえに旅立ちました」

「名はなんといった」

「一玄と申しました」

甲斐は遠くを見るような眼になり、口の中で、一玄か、と呟いた。

杖を曳き背に琴を負って、野末の道をただ一人ゆく盲人の姿が、まざまざと眼に見えるようであった。こんどはどこへゆき、どんな客にあの唄を聞かせることか。