Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

Leggi 次郎物語 (じろうものがたり) di 下村 湖人 (しもむらこじん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 117.781 caratteri · 235 schermate

Aozora Bunko

「ここの方がよっぽど凉しゅうございますわ。やっぱり木陰ですわね。」

と、奥さんは、盆を柿の木の根元におろすと、ちょっと梢を仰ぎ、鼻の下の汗を手巾でふいた。

「そりゃあ、家の中より凉しいさ。しかし、今日はここで本田と少し熱っくるしい話をしたんで、案外喉が喝いてしまったよ。」

朝倉先生は、次郎がなみなみとついでくれたコップに手をやりながら、そう言って笑った。

「そう?」

と、奥さんは、うなずくとも、たずねるともつかない眼付をして、次郎を見た。次郎は、自分のコップに、ちょうど麦湯をつぎ終ったところだったが、ちらと奥さんの顔をのぞいたきり、きまり悪そうに視線をおとした。

「いかが、本田さん。これ、おいしいのよ。」

と、奥さんは菓子を盛った鉢を次郎の方にちょっとずらしながら、

「いずれ、そのお話、あたしも白鳥会の時に伺わせていただきますわ。」

「ううむ――」

と、朝倉先生は、考えていたが、

「白鳥会の話題にするには少し工合がわるいね。問題としては実にいい問題なんだが、本田の家の内輪の事情にも関係があるんだから。」

「そう? じゃあ、あたしも伺わない方がようございますわね。