Classici giapponesi con furigana
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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
Leggi 次郎物語 (じろうものがたり) di 下村 湖人 (しもむらこじん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 200.443 caratteri · 398 schermate
「どうぞ、あちらに。」
朝倉夫人に指さされた座ぶとんは、恭一と道江との間にはさまれていた。入り口に近いほうに夫人と道江、床の間に近いほうに先生と恭一とが席を占めていたのである。
かれがまだ尻をおちつけないうちに、
「次郎さん、しばらく。」
と、道江が座ぶとんを半分すべって、あいさつをした。
「やあ、しばらく。」
次郎も、すぐあいさつをかえしたが、道江の顔をまともには見ていなかった。かの女の羽織や帯の色が、美しい雲のように、うずを巻いて、眼のまえに浮動するのが感じられただけだった。
「道江さんにお会いするのは、私も家内も今日がはじめてなんだよ。君のお父さんからのお手紙や何かで、お名前だけは、すこし前から存じていたんだがね。」
朝倉先生が次郎に言った。次郎は、固くなって、
「はあ。」
とこたえたきりだった。しかし、心の中では、父が朝倉先生にあてた手紙に道江のことを書いたとすれば、それは恭一との婚約に関係したことにちがいない。それ以外のことで、道江のことなんか書く必要はすこしもないはずなのだから、と思った。
「うちで、白鳥会の連中が先生の送別会をやった時には、道江さんもいたんじゃなかったかな。