Classici giapponesi con furigana
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しのぜんご
死の前後
豊島 与志雄
Leggi 死の前後 (しのぜんご) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 17.273 caratteri · 35 schermate
」
坪井のことだと分ると、蔦子は返事に迷った。おしげが真剣なだけに、嘘は云えなかった。考え考え答えた。決して悪い人ではないこと、けれど、初めから好きでも嫌いでもないこと、ここで切れようと思えばお互にどうにでもなること、方々に不義理をしているので、それで困って、やはり逢っていること……。そのおしまいの理由が、おしげによくのみこめないらしかった。くわしく説かれて、いくらか分りかけると、ほっとしたような顔をした。
「それでは、お金がどれくらいあったら、すっかりよくなるんですか。」
「どれくらいって、少しでいいのよ。でもそんなこと、おばさんが心配なさらなくってもいいわ。どうにかなるわ。」
蔦子はそこで初めて笑った。おしげに酒をすすめた。おしげは一杯うまそうに干して、それから、両手を懐につきこんで、長い間かかって、郵便貯金の通帳と印章とを取出した。
「これを、すっかりあげるから、役にたてて下さいよ。わたしがもってるものは、何もかもそれだけだから、役にたつように使うんですよ。」
蔦子はあっけにとられた。おばさんにお金の相談をしたのではないと、いくら云っても、おしげはきかなかった。