Classici giapponesi con furigana
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しのこうかい
死の航海
国枝 史郎
Leggi 死の航海 (しのこうかい) di 国枝 史郎 (くにえだしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 8634 caratteri · 18 schermate
ガブリエルもその中の一人であった。
どっちを見ても水ばかりで、島影一つ見えなかった。鳥さえ飛んでいなかった。翼の強い海鳥も赤道の熱さには敵わないと見えて信天翁一羽見えないのである。空に浮いているのは絹糸のような半透明の雲ばかりだ。
しかるに半透明のその雲が、墨のように黒ずむと思う間に、晴れていた空が暗くなった。赤い陽の光が樺色になり、やがてそれさえ見えなくなった。海が突然湧き立って、一面に白泡が水面に浮かび、雷のような音が聞えて来た。一刹那風が吹き止んだ。あたりは死んだように静かである。
その次に起こった光景は真に恐ろしいものであって、幾度か印度洋を航海したことを自慢にしている船長さえすっかり顔色を変えて了った……汽船を天まで持ち上げているように船底の方からムクムクと、山のような波濤が湧き起こった。前後左右を眺めても氷山のような波ばかりで一町の彼方さえ見られなかった。そうして嵐は船腹を目掛けてひっ叩くように襲って来た。空は夜のように闇であった。
汽船は救助の汽笛を鳴らし、汽缶に熱湯を煮え爛らせ、怒濤を衝いて無二無三に先へ先へと進みはしたが嵐と波に遮られて同じ所ばかりを漂った。